2016年ベスト(小説・漫画・音楽)
2016年も一瞬で過ぎていった。その割にはわりあい劇的な一年で、漢字一文字で表すなら「失」とでもなりそうだ。いろいろなものがどんどん失われていくから、記録として去年に引き続いて2016年に触れたもののベストを書いておこうと思う。
【BOOK編】
読書メーターによれば、去年は155冊本を読んだということだった。仕事をしていた時は忙しさで読めなかったけれど、やめたらやめたで強い気持ちが消滅してしまって、なかなかたくさん読むのは難しかった。
ルネ・ドーマル『類推の山』
- 作者: ルネドーマル,Ren´e Daumal,巌谷国士
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1996/07
- メディア: 文庫
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11月から12月にかけてフランス文学を読んでいこうという気持ちがわいて、いくつか有名なものを読んでいった。専攻が国文学というのもあって、なかなか海外文学を読んでこなかったので、思い切って読んでみようと思った。そこで出会ったシュールでファンタジーな一冊。上智大学短歌会のサイトでも紹介させてもらった、未完にして無限に開かれた物語。
ぼくたちはいつでも類推の山を求めている。あるいは、類推の山の登頂中に違いないのだ。類推の山は、神話の、想像力の、そして平凡な人生という厄介な時間のアレゴリーである。この魔術的で象徴的な小説を読んでいると、なぜだか元気になり、世界が無限に開かれていたころの自分を取り戻すようになる。冒険小説の効用であり、類推の所産なのだろう。オカルティックかつSF的で、とても面白かった。山尾悠子とかテッド・チャンが好きな人は好きかも。
作家によっては「出ている作品を全部読んでしまうのがもったいなくて、あえて読まないままにしている作品」というのがある。この『ノルウェイの森』もそうだった。あまりにも有名すぎて、有名すぎるゆえに読んでこなかった。
鏡みたいな小説だと思う。読みながら、いつの間にかぼくは自分の中に潜っていく感覚を得た。はっきりいって、何回もページを閉じて泣いたし、たまらなくなってベランダに煙草を吸いにいったりもした。他人の物語に交われないというのは、ほとんどの場合自分の問題、自意識の問題なのだと思う。タフに生きなければいけない。死にいつまでも魅入られていてはいけない。だけれども、僕たちは迷子なのだし、死というのはランドマークなのだ。痛い小説だった。死んだ人を思い出しもした。生きるってなんなんだろう。
新刊がそのうち出るということで、とてもとても楽しみにしている。
峯田和伸『恋と退屈』
あとで書くけれど、今年はけっこうライブに行った。そのうちの一つに銀杏BOYZの数年ぶりのワンマンライブがあった。確か去年の初めくらいに当時の職場の先輩に『愛地獄』上映会に連れて行ってもらった。いろいろと退職祝い(?)をもらったけれど、これが一番心に残っている。
同じ先輩とワンマンライブに行って、10月にはボロフェスタに行った。職場の人とはほとんど関係は切れてしまったけれど、未だに続いているのは音楽の趣味があったからだ。希死念慮にとらわれていた2015年だったけれど、銀杏BOYZのおかげで、峯田和伸のおかげで、2016年は「生きる」ことへのださいまでの執着をほんの少しだけ取り戻すことができたような気がする。
「薬やったって手首切ったって人を殺したっていいから生きて銀杏BOYZを聞きに来てください」っていった峯田。そういう風に生きたくてそういう風に生きられなかった、丸出しの生き方にあこがれてしまう。ぼくはすごくかっこいいと思う。
カミュ『異邦人』
これもフランス文学を読もう期間に読んだ本。ずっと前に買ってもってはいたのだけれど、なかなか読んでこなかった。もっと早く読むべきだった。
ぼくは、ぼくのいないところでなされるぼくに関する噂話というのが大嫌いで、それはぼくの行動の集成であって、ぼくの感情の再構成だ。そこにぼくはなくて、ぼくらしきものがある。そうして、そのぼくらしきものは、ぼくらしきものの創造主によって、好きなように扱われる。この小説の裁判というのは、まったくもって人生、社会の純粋化した形であって、規範・自明性への確固たる挑戦でもある。私以外私じゃないの、という圧倒的な隔絶が描かれるとともに、せめて憎悪を向けよというムルソーにすさまじさを感じる。
庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』
ぼくはときどき悔しい気持ちになる。僕だけが感じていること、僕だけの感性、僕だけの青春。そういうものが他人の筆によって、思っていることそのままに書かれてしまったときに、そういう気持ちは強くなる。お願いだから、僕を一般化しないでくれ。
幼馴染の由美との関係性、すべてが一日の出来事であるという構成、モラトリアム人間がより無垢なもの(=赤頭巾ちゃん)に救われるという構図、どれをとっても素晴らしい。狼に食われて終わりのペロー版ではない、救われて終わる童話を、僕は生きたい。漫画にするなら浅野いにおか押見修造系文学。
こんな感想を読書メーターに書いたわけだけれど、これは本当に面白かった。続編の『白鳥の歌なんか聞えない』は、よりキャラが深く描かれていて、これもまたよかった。
谷崎もまた「全部読み終えてしまうのがもったいない作家」で、有名なものを読まずに過ごしてきている。今年は『細雪』あたりを読めたらいいな、と思う。
面白さのあまり読み終わると叫んでしまう小説というのがたまにあるのだけど、この短篇集もそういう性質のものだった。
「柳湯の事件」、風呂場に沈む屍体の質感のある描写が気持ち悪く、信用できない語り手ゆえの薄気味悪さもある。「途上」、論理があれよあれよと絡まっていくさまが心地よい。「私」、クリスティよりも先にこれをやっているってすごすぎないですか。解説でも言われているとおり文学における一人称の性質を考えるうえでも見るところのある作品。そして「白昼鬼語」、すごいの一言。江戸川乱歩に影響を与えたのがよくわかる。大満足。
ぼくは我ながら天邪鬼で、有名な作家はあまり読んでこなかった。だけれど、2016年はメジャーなところにたくさん挑戦してみた。そのうち、特に印象に残ったのが横溝正史と山田風太郎。なんでこの二人を避けてきたのか、と過去のぼくを殴ってやりたい。
読み終えて、この小説はもう「太陽黒点」以外にありえないと叫んでしまった。恋は盲目、死にたいという自意識、太陽族というのはもう死語だと思うけどこういう若者というのは絶対に今も存在していて、その自意識を操るという形式もさることながら、すべてが第二次世界大戦の記憶とも重ね合わされて、青春小説であり、ミステリー小説であり、戦争小説であるという三重奏を実現している。これは文学作品だと思う。やるせない。
古事記については、断片的に読んでいた。けれども、一括で読んだことはなかったので思い切って読んでみた。池澤夏樹の『日本文学全集』シリーズはとてもよいもので、古典観を一変させるエナジーを孕んだ試みだと思う。これは、そんなシリーズの第一巻。
これほど面白い読み物もないんじゃないかと思う。
伊邪那岐と伊邪那美の国生みからホノニニギ天孫降臨までの疾走感、ヤマトタケルの悲哀、允恭天皇の血統の濃さ、神話と歴史を往還しながら、混沌はだんだんと収束していく。アマテラスやタケミカヅチ、オオクニヌシをはじめとする神々のキャラの濃さ、あっさりとした記述には、二次創作を生む隙間がばっちりと存在している。ほとんど漫画のように読める歴史書(仮)なのだ。最後には推古天皇がでてきて、日本史の授業につながっていく。この本は2000年以上の歴史の、はじめの一歩なのだ。
バルザック ポケットマスターピース03 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
- 作者: オノレ・ドバルザック,野崎歓,Honor´e de Balzac
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/12/17
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スタンダール、フローベール、バルザックといわゆる「世界十大小説」を読んできたけれど、中でもバルザックが一番印象深かった。
「ゴリオ爺さん」はパリの華やかな社交界の闇、と書くとなんだか薄っぺらくなってしまうけれど、二つの世界の対比には無常を感じた。地獄の沙汰も金次第、という言葉が真に迫る。19世紀フランスの写実的な描写もさることながら、ひとつひとつの物語の緻密さに舌を巻く。
他の収録作品の中ではなんといっても「浮かれ女盛衰記」が面白すぎる。プルーストやワイルドが影響を受けたという人間喜劇きっての悪役、ヴォートラン(ジャック・コラン)のかっこよさが引き立つ。きらびやかな表の社交界と政治の世界を、裏から牛耳ろうとする彼の奸計と人間的魅力には、ぼくも思わず動悸を催してしまった。
一つの短編でこれなのだから、人間喜劇全てを読んだら、物語に圧殺されてしまいそう。
諏訪哲史『アサッテの人』
大学時代に、「2000年代の芥川賞作品を読もう」という企画をしたことがある。その時、時間がなくて5、6冊読めなかったものがあった。なので、今年思い切って読んでいなかったものを読んでみた。この『アサッテの人』はその一冊。
ほんとうに何の気なしに変顔をしたくなる瞬間がある。あるいは凡庸や平凡が染み込んだ世界、自らの身体から抜け出たいという無意識の表れだったのかもしれない。ぼくはこの小説はとてもしんどかった。自殺しようと思っていた頃の気持ちがそのまま活写されていたからだ。
アサッテの方向へ行こうと思えば思うほど、クラインの壺のように元の場所へ帰って来る。それでも逃げようとする。より範疇が広い観念が、抜け出そうとする観念の外側にいつでも存在する。この小説は一見技巧的な作品に見えるけれど、実は生の叫びそのものなのだと思う。
以上の他に印象に残ったものを、名前だけ下に挙げておく。
・多和田葉子『聖女伝説』
・鈴木いづみ『あたし天使じゃない』
・シェリー『フランケンシュタイン』
・江坂遊『花火』
・村田紗耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』
・デュマ・フィス『椿姫』
・川端康成『みずうみ』
・長野まゆみ『少年アリス』
【COMIC編】
一昨年はその年に販売されたもの(つまり2015年に刊行されたもの)でベストを作った。けれど白状してしまうと、去年はあまり漫画の新刊を読まなかった。なので、このベストはほとんどそのまま去年読んだ漫画の列挙だ。
樫木祐人『ハクメイとミコチ』
9センチのこびとの女の子ハクメイとミコチの日常。子供のころ秘密基地を作って遊んだものだけれど、そのときの気持ちがぶわっと蘇る。木の実で作ったご飯がおいしそう。登場するキャラがみんな優しいので、心が荒んだときに読むとほんわかと癒される。ゆっくりみたいなキャラ造形がかわいい。
新井英樹『新説・ザ・ワールド・イズ・マイン』
真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 全5巻 完結セット [コミックセット] (ビームコミックス)
- 作者: 新井英樹
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どうして人を殺してはいけないのか。このテーマをもとにひたすら突っ走った怪作。どこかで見た感想だけれど、滝本竜彦だとか佐藤友哉にも通じる熱量で、ぼくは文学だと思った。どんどん神聖化していく「モンちゃん」の暴力に、次第にカタルシスを感じるようになっていく。災害が起こったときの人間模様がかなりリアルで1997年の作品とは思えないほど。
ワイド判 風の谷のナウシカ 全7巻函入りセット 「トルメキア戦役バージョン」 (アニメージュ・コミックス・ワイド版)
- 作者: 宮崎駿
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2003/10/31
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恥ずかしい話ぼくは映画というものをあまり見なくて、ナウシカも見たことがなかった。衝撃を受けた。まず映画が原作の3分の1くらいを映像化したものでしかないということもだし、なによりその原作のテーマの色濃さにだ。母性の物語だった。映像的なコマ割りや動きのある絵は、さすが宮崎駿といったところ。
小山ゆうじろう『とんかつDJあげ太郎』
あとで書くけれど、去年はクラブ文化というかHIPHOP文化にどっぷりとはまった一年だった。これまでは何だか不良っぽくて避けていた部分だったけれど、掘れば掘るほど面白い文化だった。
この漫画から漂ってくるサブカル感が好きだし、とんかつとDJが絶妙な具合にミックスされていて上手だった。ギャグも面白い。
『夕凪の街 桜の国』のアナザーサイドだと思う。原爆投下のシーンのコマ割りを見るだけで、この漫画でこうのさんが何を書きたかったのかというのがよくわかる。腫物のように扱われることで逆に忘れられがちな戦時中の「日常」を書ききった作品。
こうの史代の絵柄そのままに映像化された映画の方も、能年玲奈の演技も相まってかなりよい出来だった。
片瀬茶柴『虚構推理』
小説が原作の漫画だけど、これに関しては「死ぬときに未来を告げる」という「件」と「死なない」という「人魚」の能力を混ぜたという一点だけでもう最高。
西尾維新にはまった人間としては、怪異ものは無条件に面白いとなってしまう。ミステリー部分の論理展開も、にやついてしまうくらい面白い。妖怪とか都市伝説だとか、そういうものがどうして伝承していくのかという切り口は民俗学的。
平尾アウリ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』
推しが武道館いってくれたら死ぬ(2)【電子限定特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)
- 作者: 平尾アウリ
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地下アイドルが刺されるという事件もあったけれど、この漫画はそういうファン心理の明るい一面だと思う。ほんわか百合漫画のようでもあるし、曲がりなりにもアイドルが好きなぼくとしてはわかると思う部分も多い。
アイドルに貢ぐためにジャージで生活しているという主人公には、干物女的な哀愁もある。
つくづく荒川さんの女性とは思えない力強さに感服するばかり。北海道の農業高出身ゆえのパワフルな日常の描写が、ギャグ交じりでなされていて無限に読んでいたくなるような面白さ。
錬金術、生命を作るというところに興味が向いていったのも、たぶん地元で動物や植物の生死に触れあっていたからなのだろうなとなんとなく納得させられた。
映画の『ヒメアノ~ル』が面白くて、古谷作品をいろいろ読んでいったけれど、その中でも刺さった一冊。どうしようもない閉塞感となんともいえない結末のやりきれなさがたまらない。
こっちの映画はまだ見ていないけれど、評価が高いので近いうちに見てみようと思う。
panpanya『動物たち』
panpanyaの作風はどこか気が抜けていて、強いメッセージ性もなくほんわかと不思議な世界につかることができる。
いろいろな動物たちが出てくるけど、どれもこれもかわいい。なんだかんだでかわいいものは落ち着く。不条理ではあるけれど、嫌な感じがまったくないプレーンな世界に癒される。
【MUSIC編】
去年は時間があるというのもあっていろいろなライブに行った一年だった。
2月 でんぱ組.inc
4月 BUMP OF CHICKEN みるきーうぇい・カヨコ・あいみょん
7月 ART-SCHOOL ロックロックこんにちは
8月 銀杏BOYZ
11月 大森靖子 理科室コーヒー実験ブレンド
それと同時に、たくさんCDを借りて聞いた一年でもあった。特にHIPHOPや洋楽というそれまでは避けてきた音源をたくさん聞いた。『MUSIC MAGAZINE』を読みながら海外のダンズミュージックをディグったり、ジャズやインストにも触れた一年だった。
全体的にいわゆるマスターピースというか、過去の名盤を聞いてきたから新譜はあまり買っていないので、ベストはやっぱり自分の趣味全開のものになった。
でんぱ組.inc『WWDBEST』
WWDBEST ~電波良好! ~(初回限定盤)(CD3枚組+DVD)
- アーティスト: でんぱ組.inc
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 2016/12/21
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いつか書こうと思うのだけれど、ぼくは大げさではなくでんぱ組に命を救われた部分がある。2015年なんてほとんどでんぱ組ばかり聞いていた。「マイナスからのスタート」というキャッチコピーに、AKB系列のフレッシュさとは一線を画した雰囲気。申し訳ないけれどあまりかわいいとは言えないし、年齢も高い。それでもアイドルという厳しい世界に身を投じていく彼女たちにぼくは自己投影していた。
スタンスもさることながら、そもそもでんぱ組は曲がいい。このベスト盤はでんぱ組のおいしいところをフルに味わえる一枚でありながら、一篇の物語でもある。「WWDBEST」はそれまでのMV監督が一堂に会してMVを作り上げている。ぼくは号泣した。
BiSH『FAKE METAL JACKET』
はじめにBiSがあった。アイドル界のセックスピストルズ、全裸で森の中を駆けまわったり、汚いことをやらされたりと、およそアイドルらしくないことをしてきたグループ。
そんなBiSから刺激的なパフォーマンス成分を減らした結果何ができたかといえば、ただただかっこいいだけのグループが出来上がってしまった。
松隈ケンタの作るメロコアなサウンドは、BiSよりもBiSHの声にあっているかもしれない。ボロフェスで彼女たちのライブを見たけれど、モッシュが起こっていた。これはパンク・ロックなのだ。
欅坂46『世界には愛しかない』
AKB系列に全く興味がなかった。誰がいるのかもよくわからないし、なんだか性欲の匂いが強くて忌避してきたというのもある。
けれど欅坂にはびっくりした。ぼくは叫ぶ人が好きなのだけれど、欅坂は叫んでいた。たとえそれが秋元康の策略であったとしても、撃ち抜かれてしまったから仕方ない。まだ三枚しかシングルが出ていないけれど、早くフルアルバムを出してほしい。
アイドルでいえばおやすみホログラムも新譜を出していたけれど、コンセプトが定まって心地よい一枚だった。
MOROHA『MOROHA III』
HIPHOPは広すぎて、特化しないと追うのが大変。去年はキングギドラだとかエミネムだとか定番中の定番を聞いていったので、あまり最新のものに触れることはできなかったのだけれど、なんとなく自分の趣味はわかってきた。志人だったり不可思議/wonderboyだったりTHA BLUE HERBだったり、ポエトリーリーディング風というか、あまりギャングスタではないのが好きっぽい。
MOROHAはアコギの音に乗せてMCのアフロが言葉を吐く。熱量がすごい。これもボロフェスでライブを見たのだけれど、自然と内側から涙が出てきた。
大森靖子『非国民的ヒーロー』
大森靖子が神聖かまってちゃんのの子と組んで作った一枚。ゆるめるモのあのちゃんだったり生ハムと焼うどんだったり、志磨遼平だったりというメンツと組んでくれる大森靖子は本当に趣味ど真ん中。
彼女は立ち居振る舞いも楽曲もパンク・ロックだ。中心にあるのは「愛」で、愛に疾走している。しかもその愛は、いわゆる異性に対する愛ではなくて、音楽やかわいさに対する愛だ。冗談抜きに2010年代のアイコンだと思う。これからも突っ走ってほしい。
DAOKO『もしも僕らがGAMEの主役で』
もしも僕らがGAMEの主役で/ダイスキ with TeddyLoid/BANG! (初回限定盤B)(CD+DVD)
- アーティスト: DAOKO
- 出版社/メーカー: トイズファクトリー
- 発売日: 2016/09/14
- メディア: CD
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フィメールラップが流行っている。水曜日のカンパネラだとか泉まくらだとか。ぼくは女性ボーカルのバンドが好きなので、ここらへんもよく聞くけれど、DAOKOはポップに突き抜けてよいと思う。
TeddyLoidと組んだ「ダイスキ」なんて最高。FSDでちゃんみなが同じトラックでラップしていたけれど、ぼくはやっぱりこっちの方が好き。
みるきーうぇい『大人になるのはもうやめだ』
やっと全国流通盤が出た。「カセットテープとカッターナイフ」を聞いて以来ずっと追ってきたバンドだった。恥ずかしいくらいに青春を歌ったバンド。「僕の音楽を壊すくらいなら死んだほうがまし」なんて言えてしまえるバンド。ダサいかもしれないけれど、ぼくはこういうことをいえなくなってしまったら生きてる意味なんてないと思うし、それでいいと思う。
忘れらんねえよ『俺よ届け』
つくづく青春に飢えているなと思う。こういう子供のまま大人になってしまった、どこか切なさのあるバンドが大好き(銀杏BOYZだとかフラワーカンパニーズだとかサンボマスターだとか)。
やっぱりボロフェスの話になるんだけれど、MOROHAのライブのときにボーカルの柴田さんが隣にいた。酒でどろどろになりながら、一心に頭を振っていた。ぼくは「そうだよな」と思って、ぼくもずっとこうでいたいと彼の隣で頭をふったのだった。
amazarashi『世界収束二一一六』
amazarashiの歌う終わってしまってる田舎の情景だとか閉塞してる自意識がはまる時期っていうのはかなりあって、長野に帰省してる間はずっとこれを聞いていた。
「タクシードライバー」の中の「青い青空が青過ぎてもはや黒で」なんてリリックに思わず首肯してしまう。ラップに触れ始めたから初めて意識したけれど、amazarashiもポエトリーリーディングっぽいよなと思う。
スピッツ『醒めない』
スピッツの歌詞っていうのは読めば読むほど、文学的だなと思う。結構難解なことをいっているのだけれどポップになりうるというのはすごいと思う。セックスと死しか歌わないと草野マサムネが言っているように、彼の歌詞空間はなかなかパンクだ。
京都駅で「えにし」を聞いて号泣したぼくは、今回の「子グマ!子グマ!」でもはちゃめちゃに泣いた。
今年はどんなものに出会えるだろう。
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