こんにちは『後拾遺和歌集』

後拾遺和歌集を読んだ。 後拾遺和歌集 (岩波文庫 黄 29-1) 作者: 久保田淳,平田喜信 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/09/19 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る いくつかの歌をピックアップして感想を日記に書いたので、こちらからリンクで…

きたみち、ゆくみち――2018年冬

10月 フェリーニの『8 1/2』を見る。「芸術家の名に値する人間なら“沈黙への忠誠”を誓え」。どうやらイタリア映画がぼくは好きらしい。思い返せば、小説もまたイタリアのものに多く触れた一年であった。 8 1/2 [Blu-ray] 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: …

きたみち、ゆくみち――2018年秋

7月 関東編がはじまった。 といっても、ほとんど変わったことはない。鴨川がないことくらいである。 名古屋へ行き、四流色夜空くんと鳥居くんと飲酒をする。次の日の朝、神聖かまってちゃんの新譜をかけながら、真っ青な空の下で喫煙をする。ニッカの壜が散…

きたみち、ゆくみち――2018年夏

4月 谷とも子さんの『やはらかい水』の読書会へ行く。酔っぱらった二次会で、吉川宏志さんに「塚本邦雄が~」と厄介な絡みかたをしてしまう。土岐友浩さんや大森静佳さんと映画の話をした。『夜空は最高密度の青色だ』についての感想が土岐さんと一致してう…

きたみち、ゆくみち――2018年春

1月 自分を変えようと思ったのだ。 何かをするのだ、その「何か」を定めようと思った。前年のように天井をひたすら見上げて、自傷をして、そうして一年がすぎて、そのまま死んでいくのが怖かった。だから、ぼくは剛力で怠惰な性質を捻じ曲げようとした。だか…

0000書店紀行アーカイブ

0000書店紀行とは、10000円を握ってさまざまな人と本屋へ行き、本の話をしながら10000円分本を買おう、という企画です。 これはこれまで行われた分のアーカイブです。 第一回 ゲスト:木野誠太郎(シナリオライター) kamisino.hatenablog.com 第二回 ゲスト…

倫理

「うたの日」というサイトがある。 ぼくもこのサイトについては外様なので、外様なりの認識で説明すると、「インターネット上で歌会ができる場所」である。「歌会」とはいえ、同時にひとつの場所に集まって、相互的な評を述べる場であるというよりも、めいめ…

ポール・ニザン『アデン・アラビア』

僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。 ポール・ニザンの『アデン・アラビア』は、こういう一文ではじまる。カミュの『異邦人』と並んで、二十世紀フランス文学におけるもっとも有名な書き出しのひとつに数えられるら…

かんざし第三号感想

94年生まれだから、櫛でかんざし。おしゃれです。 いくつか印象に残ったものについて書いておきます。 写真はtwitterよりお借りしました この土地のどこかに鳥の国があるといふあなたの嘘ためらはず/浅野大輝 毎年毎年渡り鳥はどこへいくのだろう、と不思議…

ぬばたま第二号感想

うばたまや闇のくらきに天雲の八重雲がくれ雁ぞ鳴くなる/源実朝 あじさいの藍のつゆけき花ありぬぬばたまの夜あかねさす昼/佐藤佐太郎 96年だから「黒」ということはあとあと知ったのだけれど、黒色ってとてもかっこいいな、と思う。印象に残った歌につい…

2017年ベスト(本・その他コンテンツ)

kamisino.hatenablog.com 2016年は「失」という漢字で総括していた。 去年は「変」だと思う。よくもわるくも、いろいろな変化があった。 兵庫短歌賞の新人賞をもらい、短歌の集まりによくいった。それから仕事をはじめた。薬の量も減った。 去年は漫画や音楽…

ホドロフスキー・オールナイト

ホドロフスキーのオールナイト上映会にいった話。 物語の結末にふれる部分があります。 昨日、京都のみなみ会館へアレハンドロ・ホドロフスキーのオールナイト上映会に行った。12月に新作『エンドレス・ポエトリー』が公開されるので、その記念ということだ…

岡大短歌vol.5感想

岡大短歌5号。 まず、全体についてなのですが、企画がとても面白かったです。5首連作には岡山についての小文が添えられていて、一度も行ったことのない岡山という土地に閉じ込められた感情の一端を味わうことができます。レぺゼン感があって、とてもよかった…

神大短歌vol.4感想

(画像はTwitterからお借りしました) 神大短歌会。 創設の時期にちょっとかかわりがあったので、そのつてで買ってみました。 気になった歌をチョイスしてみようかなと思います。 さるすべり咲く夏いくつ重ねてもわたしのものにならない空よ/嶋田さくらこ …

同志社短歌4号感想

目玉焼き黄身を潰すと泣き顔のようになるから口にはできない/石勇斎朱吉 ちょっと前に「ひよこがかわいそうだから、卵料理が食べられない」という女子が話題になったことがある。当時はしこたま馬鹿にされていたけれど、スーパーの卵は無精卵だから、とかな…

SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR "THIRTY30FIFTY50"名古屋公演レポート

スピッツのライブに行くのは、「ロックロックこんにちは」のようなフェスも含めればおそらく6回か7回目。 彼らのライブのよいところは、スピッツが好きなはずの人間でも一瞬「何の曲だっけ?」と思ってしまうマイナーな曲を一曲は演奏してくれるところだと思…

相思樹

宋の康王は暴虐の限りを尽くした王であった。故に孤独な王であった。 日に十も人を殺し、その民には途方もない労働を課した。そして、これに従ぜないものは、国の賊として容赦なく処刑した。口に糊した民や恐怖した臣下が、四方の富める国々へ流れ出たのも致…

今村夏子と「書かないこと」

そこにあるべきものが存在していないとき、ふと恐怖に襲われることがある。 いつも同じ場所に置いてあるはずのものが、突如消えていたとき。顔があるべきところに、顔がないのっぺらぼう。しっかり踏みしめていたはずの大地がどろどろに緩みだし、頼るものの…

わすれもの装置

昼下がりの公園。アール氏はベンチに腰掛け昼食をとっていた。空は青々として雲は白く、絶好のランチ日和というわけだ。 元気いっぱいはしゃぎまわる子供たちを目で追っていたアール氏は、視界の端にちらりと何かが見えたのに気がついた。 「おや、あれはな…

かみしのの四半世紀のベスト

四半世紀のベストです。 名刺みたいなものです。 どうやら不穏なものが好きなようです。 kamisino.hatenablog.com kamisino.hatenablog.com kamisino.hatenablog.com kamisino.hatenablog.com

四半世紀のベスト④

今回は詩歌・古典その他です。 前回↓ kamisino.hatenablog.com 76、麻耶雄嵩『メルカトルかく語りき』 メルカトルかく語りき (講談社文庫) 作者: 麻耶雄嵩 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/07/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 一…

四半世紀のベスト③

kamisino.hatenablog.com 前回↑ 今回は怖い小説たちです。 51、連城三紀彦『戻り川心中』 戻り川心中 (光文社文庫) 作者: 連城三紀彦 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/01 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 42回 この商品を含むブログ (90件) を見…

四半世紀のベスト②

今回は現代小説が多めです。 その①はこちら kamisino.hatenablog.com 26、藤枝静男『田紳有楽・空気頭』 田紳有楽 空気頭 (講談社文芸文庫) 作者: 藤枝静男 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/11/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 「…

四半世紀のベスト①

いつの間にか26歳になり、人間五十年の時代ならば折り返し地点を過ぎてしまいました。 カート・コバーンやジム・モリソンに憧れて27歳になったらアメリカに行ってショットガン自殺しよう、なんて思い始めてから数年。あとタイムリミットまで一年ですが、もう…

キャス読書会第一回『ノーライフキング』覚書

ノーライフキング (河出文庫) 作者: いとうせいこう 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2008/08/04 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 29回 この商品を含むブログ (48件) を見る 80年代は浅田彰や宮沢章夫がのちに回顧するように、あらゆるものが記号…

ぼくとK氏とでんぱ組

2011年、今出川通。 ぼくはアイドル好きの友人から「でんぱ組.inc」の話を聞いていた。 「最上もががうんちゃらかんちゃら」「りさちーが云々」……。正直そのほとんどを覚えていない。というのも、当時のぼくはアイドルにあまり興味がなかった。 それでも何の…

0000書店紀行:番外編inブックオフ~後編~

前編はこちら↓ kamisino.hatenablog.com よ これって知ってる? か 長野まゆみ、好きだね結構。この人はすごいよ、文字だけで別の世界を作り上げるというか。『少年アリス』でデビューしてると思うんだけど、宮沢賢治とか山尾悠子とかに近いかも。幻想小説 …

鯉は空を望む

鯉の煮付けは甘辛く、長野県民好みの味付けである。 祭事にしか食卓に並ばないという希少性に加え、馬の蹄状の盛り付けや、いかにも味の染みた佃煮色の彩りが食欲をそそるが、口にしてみると存外泥臭く骨ばかりで、興ざめであった。蹄中央の窪みには、大振り…

0000書店紀行:番外編inブックオフ~前編~

0000(ゼロヨン)書店紀行とは? 月に一回10000円をもって他者と本屋に行こうという企画です。そこで紹介された本を買ったり、好きな作家の話を聞いたりしながら本屋をぶらぶらします。その月の新刊を見てみたり、ぼくが10000円以上本にお金を使わなくなった…

『群像70周年記念号』全作レビュー8~いのちの家~

「第三の新人」の波もおさまって、『群像10月号』初の女性作家が顔を出します。 群像 2016年 10 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/09/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (6件) を見る 円地文子。 あまり有名な作家ではありませんが、…