2017-01-01から1年間の記事一覧

ホドロフスキー・オールナイト

ホドロフスキーのオールナイト上映会にいった話。 物語の結末にふれる部分があります。 昨日、京都のみなみ会館へアレハンドロ・ホドロフスキーのオールナイト上映会に行った。12月に新作『エンドレス・ポエトリー』が公開されるので、その記念ということだ…

岡大短歌vol.5感想

岡大短歌5号。 まず、全体についてなのですが、企画がとても面白かったです。5首連作には岡山についての小文が添えられていて、一度も行ったことのない岡山という土地に閉じ込められた感情の一端を味わうことができます。レぺゼン感があって、とてもよかった…

神大短歌vol.4感想

(画像はTwitterからお借りしました) 神大短歌会。 創設の時期にちょっとかかわりがあったので、そのつてで買ってみました。 気になった歌をチョイスしてみようかなと思います。 さるすべり咲く夏いくつ重ねてもわたしのものにならない空よ/嶋田さくらこ …

同志社短歌4号感想

目玉焼き黄身を潰すと泣き顔のようになるから口にはできない/石勇斎朱吉 ちょっと前に「ひよこがかわいそうだから、卵料理が食べられない」という女子が話題になったことがある。当時はしこたま馬鹿にされていたけれど、スーパーの卵は無精卵だから、とかな…

SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR "THIRTY30FIFTY50"名古屋公演レポート

スピッツのライブに行くのは、「ロックロックこんにちは」のようなフェスも含めればおそらく6回か7回目。 彼らのライブのよいところは、スピッツが好きなはずの人間でも一瞬「何の曲だっけ?」と思ってしまうマイナーな曲を一曲は演奏してくれるところだと思…

相思樹

宋の康王は暴虐の限りを尽くした王であった。故に孤独な王であった。 日に十も人を殺し、その民には途方もない労働を課した。そして、これに従ぜないものは、国の賊として容赦なく処刑した。口に糊した民や恐怖した臣下が、四方の富める国々へ流れ出たのも致…

今村夏子と「書かないこと」

そこにあるべきものが存在していないとき、ふと恐怖に襲われることがある。 いつも同じ場所に置いてあるはずのものが、突如消えていたとき。顔があるべきところに、顔がないのっぺらぼう。しっかり踏みしめていたはずの大地がどろどろに緩みだし、頼るものの…

わすれもの装置

昼下がりの公園。アール氏はベンチに腰掛け昼食をとっていた。空は青々として雲は白く、絶好のランチ日和というわけだ。 元気いっぱいはしゃぎまわる子供たちを目で追っていたアール氏は、視界の端にちらりと何かが見えたのに気がついた。 「おや、あれはな…

かみしのの四半世紀のベスト

四半世紀のベストです。 名刺みたいなものです。 どうやら不穏なものが好きなようです。 kamisino.hatenablog.com kamisino.hatenablog.com kamisino.hatenablog.com kamisino.hatenablog.com

四半世紀のベスト④

今回は詩歌・古典その他です。 前回↓ kamisino.hatenablog.com 76、麻耶雄嵩『メルカトルかく語りき』 メルカトルかく語りき (講談社文庫) 作者: 麻耶雄嵩 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/07/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 一…

四半世紀のベスト③

kamisino.hatenablog.com 前回↑ 今回は怖い小説たちです。 51、連城三紀彦『戻り川心中』 戻り川心中 (光文社文庫) 作者: 連城三紀彦 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/01 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 42回 この商品を含むブログ (90件) を見…

四半世紀のベスト②

今回は現代小説が多めです。 その①はこちら kamisino.hatenablog.com 26、藤枝静男『田紳有楽・空気頭』 田紳有楽 空気頭 (講談社文芸文庫) 作者: 藤枝静男 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/11/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 「…

四半世紀のベスト①

いつの間にか26歳になり、人間五十年の時代ならば折り返し地点を過ぎてしまいました。 カート・コバーンやジム・モリソンに憧れて27歳になったらアメリカに行ってショットガン自殺しよう、なんて思い始めてから数年。あとタイムリミットまで一年ですが、もう…

キャス読書会第一回『ノーライフキング』覚書

ノーライフキング (河出文庫) 作者: いとうせいこう 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2008/08/04 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 29回 この商品を含むブログ (48件) を見る 80年代は浅田彰や宮沢章夫がのちに回顧するように、あらゆるものが記号…

ぼくとK氏とでんぱ組

2011年、今出川通。 ぼくはアイドル好きの友人から「でんぱ組.inc」の話を聞いていた。 「最上もががうんちゃらかんちゃら」「りさちーが云々」……。正直そのほとんどを覚えていない。というのも、当時のぼくはアイドルにあまり興味がなかった。 それでも何の…

0000書店紀行:番外編inブックオフ~後編~

前編はこちら↓ kamisino.hatenablog.com よ これって知ってる? か 長野まゆみ、好きだね結構。この人はすごいよ、文字だけで別の世界を作り上げるというか。『少年アリス』でデビューしてると思うんだけど、宮沢賢治とか山尾悠子とかに近いかも。幻想小説 …

鯉は空を望む

鯉の煮付けは甘辛く、長野県民好みの味付けである。 祭事にしか食卓に並ばないという希少性に加え、馬の蹄状の盛り付けや、いかにも味の染みた佃煮色の彩りが食欲をそそるが、口にしてみると存外泥臭く骨ばかりで、興ざめであった。蹄中央の窪みには、大振り…

0000書店紀行:番外編inブックオフ~前編~

0000(ゼロヨン)書店紀行とは? 月に一回10000円をもって他者と本屋に行こうという企画です。そこで紹介された本を買ったり、好きな作家の話を聞いたりしながら本屋をぶらぶらします。その月の新刊を見てみたり、ぼくが10000円以上本にお金を使わなくなった…

『群像70周年記念号』全作レビュー8~いのちの家~

「第三の新人」の波もおさまって、『群像10月号』初の女性作家が顔を出します。 群像 2016年 10 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/09/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (6件) を見る 円地文子。 あまり有名な作家ではありませんが、…

パスピエ TOUR 2017 "DANDANANDDNA"大阪レポート

ライブレポートをご所望の方は少し飛ばしてご覧ください。 ぼく自身こういうことを言い出す人間をあまり信用することができないのだけれど、それでもあえて言葉にしてみたい。 ぼくは音楽に救われてきた。 なにもかもが無意味に思われて、生と死のあいだをふ…

0000書店紀行:第三回ミステリー~後編~

前編はこちら↓ kamisino.hatenablog.com か 新潮社ね つ 島田荘司のシリーズをなぜか出しだした新潮社ね。井上ひさしの『十二人の手紙』をおすすめしようと思ったんだけどないね。書簡体で12個の手紙の短編が書いてあって、それがミステリー的なオチを毎回用…

0000書店紀行:第三回ミステリー~前編~

0000(ゼロヨン)書店紀行とは? 月に一回10000円をもって他者と本屋に行こうという企画です。そこで紹介された本を買ったり、好きな作家の話を聞いたりしながら本屋をぶらぶらします。その月の新刊を見てみたり、ぼくが10000円以上本にお金を使わなくなった…

桃色の海

僕は毎日街へ出て、かわいいものに出会う。 今日は白い毛をした猫に出会った。歩き回るのに疲れてふと目についた公園で座っていたら、にゃあんと喉を鳴らしながら一匹の子猫が僕のそばに近寄ってきて毛づくろいを始めた。僕は大の愛猫家である。飼われている…

『群像70周年記念号』全作レビュー7~焔の中~

予定では去年のうちに全部の作品についてレビューし終わるはずだったのですが、そううまくいくはずもなく、まだまだ序盤の『群像10月号』全作レビュー。 群像 2016年 10月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/09/09 メディア: Kindle版 こ…

同志社短歌3号感想

朝起きて昨日の日記を書いてからまったく同じ生き方をする/あかみ「どうせそこそこの幸せ」 とりたてて斬新な表現があるわけじゃないし、むしろ直球の「あるあるネタ」といってもいいと思うのだけれど、「まったく」という強調の言葉が面白い。 時間帯的に…

2016年ベスト(小説・漫画・音楽)

2016年も一瞬で過ぎていった。その割にはわりあい劇的な一年で、漢字一文字で表すなら「失」とでもなりそうだ。いろいろなものがどんどん失われていくから、記録として去年に引き続いて2016年に触れたもののベストを書いておこうと思う。 【BOOK編】 読書メ…